住宅の配筋とは?
配筋とは基礎の骨になる鉄筋を組むことです。
上物の重量や耐震等級、地盤の強度等に影響されて鉄筋量や形状は変わります。
単純に基礎を頑丈にする必要がある場合は鉄筋量は増えます。その分施工も大変になり時間もお金も掛かることになります。
完了後、メーカーや工務店の検査や第三者確認機関の検査がありルールに沿って作らているか、図面通りにできているかのチェックが行われます。
ばら組みとユニット
鉄筋の組み方は2通り。
ばら組み
全ての部材を職人が拾い出し加工、現場で結束線で結び組み立てる。溶接の部分はありません。
スターラップの上端端部をフック形状にする必要があります。
専門の鉄筋屋さんがいて、拾い(必要な材料を図面から読み取る事)から施工まで請け負ってくれます。
マンションやアパート等の大きな建物はこの工法で組まれている事が多いです。
ユニット
工場で予め作られたユニット鉄筋。指定の寸法やピッチで溶接されていて、ある程度の大きさに区切ってあるので現場では継ぎ手を付けて繋いでいくため仕事は早いです。
溶接の認定を受けた工場であれば、スターラップの上端部のフックは必要ありません。
ひと昔前、ユニットの溶接はきちんとした工法でベテランの職人が溶接しないとすぐに取れてしまったり、溶接時の熱で鉄筋そのものを溶かしてしまったりと不具合が多かったものです。
そのため手結束の方が頑丈とされていました。
しかし最近では溶接の技術が向上し(財)日本建築センターで認定が取れるまでになりました。
JIS(日本工業規格)で認められれた鋼材を(財)日本建築センター認定の工場が溶接加工といった具合。
現在住宅の基礎はユニットが主流になっています。ハウスメーカーも認定を受けている工場でユニットを作る事が当たり前です。
とは言ってもばら材の結束線手組み工法がダメとか、ユニットの方が丈夫という事ではないです。
住宅の場合、ハウスメーカーや工務店に指定された工法で施工しましょう。
組み方に指定が無い場合
ばらでもユニットでもどっちでもいいという場合もあります。
その場合は職人から見たメリットとデメリットを比較して自分で決めましょう。
ばら外注
ばら組みの外注(鉄筋屋)は職人によって値段は様々なので安い職人を知っていればその分上りが出せるかもしれません。
質は値段なりなことが多いです。
メリットとしては任せている間に他の仕事ができますね。
ばら自社
自分でやるとなると大変なのは拾い出しです。
長物の運搬にはトラックが必要になります。
無ければ運搬費(3万円前後)は覚悟ですね。
鉄筋を触ったことは全部自分の手間賃になるという事です。
ユニット
材料自体は工場で溶接加工されている分高額になるのは仕方ありません。
が、現場での組み立ては圧倒的に早いです。
材料の拾いから運搬費まで込みになっているので金の計算も分かり易いですね。
ユニット工場のセールスポイントは「人手不足の解消」と「ばら組みより結果的に安くつく。」だそうです。
こんなやり方もあります。
安い鉄筋屋さんに頼み、急所だけ自分で出向き修正していくのも手です。
ユニット工場にすべての部材を頼めば自分で加工するものが無いので楽なのは確かです。
加工賃は切って曲げて一本約200円とされています。
一般的な住宅でもスラブ材だけで120本前後は加工します。
継ぎ手を入れれば30,000円は楽に加工代として払うこととなります。
加工代は言ってしまえば外注費です。自分で加工すれば自分の手間となり出費は抑えられますね。
スラブ材と継ぎ手は自分達で加工しても1棟2時間程度で作れます。
そこで
外周と内周と地中梁はユニットを使用。スラブと継ぎ手は生材をダンプに積んで現場で加工。
雨の日に置き場で加工してもいいと思います。
そうすることで加工費の分は手元に残ります。
確かな材料で
いずれにしても鉄筋は異形鉄筋と呼ばれる凹凸がある物。
JISで認められた鉄筋コンクリート用棒鋼。
「ミルシート」という鋼材の材質を証明する品質証明書が発行できる物を使いましょう。
ユニットに関しては(財)日本建築センターで認定を受けている工場に依頼しましょう
。
鉄筋の組み方 ルール
径
一般住宅の鉄筋は主に13㎜(D13)と10㎜(D10)を使用。
主筋、スターラップ
外周筋、内周筋共に一番上の段と下の段の横筋を「主筋」と呼び縦筋をスターラップと呼ぶ。
主筋はD13が多くスターラップはD10が多い。
主筋径はD16、D19、D22等がある。
主筋と主筋の間の横筋を腹筋などと呼ぶ。D10が多い。
ピッチ
図面上ピッチ、間隔を表す記号に@が使われている。
200㎜ピッチの場合 @200と表記されている。
定着
鉄筋を繋ぐ場合は40d(繋ごうとする鉄筋径を40倍する)被せる。ラップさせる。
これを定着と呼ぶ。
例:D13の40dは520㎜
継ぎ手の加工は余裕をみて600㎜の被りを見て1200㎜で加工する。
被り厚
生コンの表面から鉄筋までの生コンの厚みを「被り」、「被り厚」と呼ぶ。
鉄筋が枠にくっ付いていたら被りは0㎜となる。
鉄筋のルールとして最低被り厚を40㎜に定めるメーカーが多い。
それ以下にならないようにスペーサーブロックやポリドーナツという物で被り厚を確保しよう。
ポリドーナツは壁に、スペーサーブロックはスラブ筋や
外周筋の下主筋の下に置くのが一般的だ。
指定がある場合が多い。800㎜~1000㎜ピッチ。
スラブ筋の重ねには順番がある
スラブ筋十字に交わるため、施工には順番があるのをご存知だったであろうか?
図面により指示がある場合もある。
指示が無い場合は基礎伏図を見て短い辺(短辺)が下、長い辺(長辺)が上になる。
短辺を先に並べよう。
3本ラップ
継ぎ手筋を取り付ける時に注意する点として、
主筋を含めて2本以上重ねてはいけない。
というルールがある。3本目以降は隙間を空けよう。
写 3本ラップ
スラブ筋も同じだ。3段にならないようにする。
立ち上がり筋の足がスラブ筋の上に乗って3段になりそうな所は2段目にくぐらせる等工夫しよう。
スターラップ
スターラップのピッチが指定のピッチになっているか。
ユニットは特にユニット同士のジョイント部分のスターラップが抜けていることが多い。
開口部や袖基礎の端部にもスターラップは必要だ。
立ち上がり筋がT字型にジョイントする部分は交点の芯から50㎜以内に1本必要だ。
主筋が切りっぱなしになっていないようにする
人通口や袖基礎のように主筋を切るところは、コの字型の補強筋を取り付ける。
スターラップも忘れずに付けよう。
写 主筋が折り返して定着を確保している。
深基礎等段差がある所も切りっぱなしになっていないように定着を取っていく。
段差の場合はコの字ではなくZ型の鉄筋で下主筋同士を定着させる。
写 Z筋
鉄筋検査
図面通り配筋されているか検査する工程がある。
社内検査と第三者の検査をやらない所は今は少ないだろう。
チェックポイントは
立ち上がりや地中梁の位置や数。
継ぎ手筋の本数、径、定着、3本ラップしていないか。
スターラップのピッチ、端部50㎜以内、人通口端部補強。
スラブのピッチ、短辺と長辺。
スペーサーブロックのピッチ。
人通口の補強筋の数、定着。
防湿シートの破れ。ガムテープで補修。
等。
検査には立ち会って指摘事項は素直に直そう。
それも監督とのコミュニケーションだと私は考えている。
コツ
鉄筋組のコツはとにかく定着と継ぎ手筋の入れ忘れに注意。
結束線での縛りもしっかりと強く。
立ち上がり筋の下主筋とスラブ筋もたくさん固定しよう。これをいい加減にやると立ち上がり筋が生コンに押されて動いてしまう。
アンカーの芯は通り芯
アンカーの芯は通りの芯だ。主筋の芯が通り芯にきてないだろうか?
アンカーがクランク型なら大丈夫だ。
ストレートだと芯位置の取り合いが起こってしまう。
長手の立ち上がり筋ならすぐに動かせるがコーナー部分に芯に主筋がいては動かすのが大変だ。
ホールダウンはアンカーより太いので主筋に芯の位置を取られてしまうとかなりズレてしまう。
合わせ目はスターラップの背中側が通り芯になるように主筋側にずらす。
スターラップ側に余裕ができてアンカーやホールダウンを真っすぐ立てることができる。
この時の注意は主筋側の枠までの被りが足りなくならないように注意することだ。
特にばら組の場合はスターラップがフック型なので30度程折り曲げて被りを確保しよう。
クランクアンカーを使えば鉄筋の芯の位置はそこまで気にしなくてもいいのだが、ストレートアンカーが50円前後なのに対してクランクアンカーは2倍かそれ以上する場合もある。
1棟あたり80本~100本使用するので4,000円~5,000円程高くついてしまう。
ストレートアンカーをベンダーでクランク加工するという手もあるぞ。